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ライナーノーツ

HARCOこと青木慶則の新作、ミニアルバム『Night Hike』がリリースされる。私たちはこのアルバムを手に、ひとりで、ふたりで、大勢で、ともに歩むことができる。前作とはどことなく違う感触、空気の感じも音の響き方も声も、いつもに増して柔らかく、温かい。そして、まるで夢の中にいるようなゆったりとした心地良さや切なさや儚さとは裏腹に、日常のクリアな確かささえある。
「前作『Ethology』は行動範囲がけっこう狭いんですよね、でも今回は明らかにそこから一歩外に出た感じですね。前は何か渇望している感じがあったんですかね、常に何かを求めているというか。今作はある程度満たされている状態で作れたっていう感じはあるかなあ。」
HARCOの歌世界から一貫して通じる“温もり”や“親しみやすさ”は、一体どこからあふれてくるのだろう。私たちが普段目にするもの、触れるもの、感じること、今までも見えていたものが、そこにあったものが、HARCOの歌というフィルターを通すと、より愛おしくなるから不思議だ。また、彼の声は曲ごとに心地の良い、さまざまな空間へと誘ってくれるのだ。
「いろんな意味で今回のアルバムは旅してますよね。『Ethology』の頃までずっと都内に住んでいて今は郊外に住んでるんですけど、当たり前に空が近くにあって緑や青が目の前にあってっていう、そういう環境の影響からも前作と違うものが出てるかもしれないですね。前は音楽があるから音楽の中に自分の生活があるっていう感じだったんですけど、今は逆で、普段の生活があるから音楽がある、みたいな感じになってきましたね。」
初のセルフプロデュース作品となった前作『Ethology』から始まったミニアルバム3部作の2作目に当たる今作。HARCO自身の音楽観には何か変化があったのだろうか。
「ミニアルバムを3作続けて出すっていうのが初めてなので、すごく楽しいですよ。自分の中で今ミニアルバムがしっくりきているというか、安心できるというか。『Ethology』でやりたかったものが見えて、『Night Hike』が折り返し地点になって、なんか次のアルバムで(より自分の原点に)帰っていくんじゃないかなあと思うんですよ。「Night Hike」という暗闇から始まって、「春、間近」で日だまりに抱かれて待っている、みたいな。暗闇から始まって最後明るいところでドアを開けて終わる、っていう…外に出て光の中に溶け込まれていってしまうような、そういうものが何か暗示してるんじゃないかなって思う。今までたくさん人に与えてもらったものを、これからは自分が出していく、そういう音楽観になっていくんじゃないかなと思いますね。」
自身も自らの描く世界の中で歩み続けている。暗闇を怖がることなく、孤独から逃げることなく、懐かしい場所へと回帰し、宇宙や未知の世界に憧れ、愛する人を想い、二度とないその時を真っすぐ見つめ、正面から光を受け始める。
「今までは多分漠然とがんばりたいなあっていうのがあってこれまで街中歩いて満足してたのが、今はちゃんと音楽で死ぬまでがんばっていきたいなあというか、どこまでも行きたいなあと。だけど、未来のことなんて何も見えないからけっこう暗闇の中というか…そういう気持ちを『Night Hike』は表してると思います。「Night Hike」に“サーチライトはいつの間にか消えたのか”っていうフレーズがあるんですけど、今までは誰かが“こうやってやればいいんだよ”って教えてくれたのが、どんどんどんどんそのライトがなくなって消えてって、あるとき気がついたら真っ暗になって、ああこれが大人なのかって(笑)。あとは結局自分なんだなあって。」
そんな彼にとっての創作とは、とても素朴なものに思える。 「『Ethology』の頃からよく言ってたんですけど、“手のひらの上のポップス”っていうお手軽感というか。例えばテーマが大きかったり逆に小さかったりしても、音楽は重厚なものじゃなくてすごく手軽なものでありたいっていうのがあって。そのへんは僕の味としてこだわっていきたいなと思いますね。あまり生活とかけ離れてないものを作りたいんですよ、普通のありきたりな日常を描きたいし。」
最近ライヴでともに演奏するメンバーも固まってきて、次作はバンドサウンドよりにしたいと語るHARCO、そして今一番興味を注ぎ、模索しているのが“自分の声”だという。「思い描いた姿と一緒の声。まあ、そう言うと技術的なことになっちゃうけど。声=その人の人格だと思う。落ち着いていて優しいけど、優しいだけじゃない声。声と一緒に自分も成長していけたらいいなと思いますね。声とともに歩んでいく、うまく言えないですけど(笑)。」
次作、新しいアルバムの日だまりの中にいる彼の、第一声が待ち遠しい。
(小窪瑞穂)
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