こんなにも平凡なまいにち。
 きゃっきゃとお風呂で騒ぐ子どもの声。とろとろのビーフシチューのにおい。誰かの気配がすぐそばにある、そんな安穏とした営みの中で、ふと、気付くことがある。それは好きな人がいて、やさしいほうの自分 になればなるほど、思いがふくらむたぐいのこと。
 ハルコとキンカ。もともとふたりは、とても境遇が似ていた。どちらも同じ音楽を生業としていて、バンドからやがてソロになって。そんなふたりが恋をして、やがていっしょに暮らすようになり、3年ほど経ったある日。テーブルに向かい合ってごはんを食べながら、どちらからともなくこんな話になった。

「昔からおかしいと思っていたことあるんだよね」
「いや、実はわたしもそうで」。

 ハルコは山が好きだった。自然のありのままの姿に、むんずと心を奪われていた。しかし実際登ってみると、どの山もおしなべてふもとのほうは、木が機械的に生えていることに気付いた。やがてそれは人の都合で、人工的で植林されたものだと知り、愕然とした。
 キンカはキンカで、世の中にはたくさんムダがあるなと思っていた。エコをことさら意識していたわけでもなく、ただ、なんだかもったいないなーと感じることが多かった。そんなふたりの他愛のない会話が、やがて少しずつ積み重なると、当たり前に与えられている情報だけで満足せず、自分たちからいろんなことを知り、行動に移すようになった。
 庭にちいさな畑を作った。ゴミを少しでも減らしたくて、コンポストも作った。自転車にもっと乗るよう心がけた。そうしていくうち、どちらからともなく思った。この気持ちを誰かに伝えたい。幸福なことに、 ふたりには魔法の剣を持っていた、そう、音楽だ。 「地球を大切にしようってみんな思ってる。人によってウェイトはそれぞれだけど、心のどこかでは感じてると思う。そういうことをテーマにしたコンセプトアルバムを作ってみようと思ったんです (HARCO)」
 ただ壮大なテーマだけに、そのままの普遍的なメッセージになるのはニガテだった。自分たちなりの、独特の目線やねじれた空想を重ねることで、リアルに感じて、気付いて欲しかった。「愛ってどこかに浮いてるものじゃなくて、自分にくっついてるもんだよっていうのを。それを、もうちょっと私たちなりの言葉で伝える。そこから聴く人それぞれから、愛を生んでくれればいいなって(Quinka,with a Yawn)」。  

 そして、エコとヒトをつなぐ新ユニットHARQUAが生まれた。