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セルフライナーノーツ

椅子 今回のアルバムが出来上がるまでの道は、かなりくねくねと曲がり、最後は空に吸い込まれるような真っ直ぐな上り坂だった。はじめは久々のピアノ弾き語りアルバムにしようとしていたし、正反対のエレクトロな曲を中心にしようと取り組んでいた時期もあった。そんななか恒例の「HARCOの春フェス」に加え、コラボソングが生まれる機会がたくさんあり、いずれもとても良い曲だっので、その曲たちをバランス良く配置したアルバムをイメージをするようになった。

 さらに来年から名義を本名に改めることが決まり、これがHARCOとしてのラストアルバムになるのなら、いつかのために取っておいたストックの曲からも選ぶべきではないかと考えるようになった。そこでレコーディング開始直前に、あらかじめ決まっていたラインナップを大幅に刷新。雑食家としていろんな音楽を(ある意味節操なく)取り込んできた僕と、正統派な曲も書きたいという僕のもうひとつの側面も合わせたアルバムが、最後にして初めてここに完成したのではないかな、と思っている。

1 Monday Mornings

もともとは前作「ゴマサバと夕顔と空心菜」のために書いていた楽曲。収録した音源は、歌も含めてほとんど当時のデモのまま。でもそのおかげで肩の力が抜けた歌い方ができていて、知らない自分を発見できた貴重な1曲になった。このアルバムには、総勢18名のゲストミュージシャンが参加してくれているのだけど(もしかしたら過去最多かも?)、この曲だけは自分ひとりですべてレコーディングした。詩も曲もとくにモチーフというものは無く、このアルバムのなかでは純粋に手癖で書いた唯一の曲だと思う。
2 東京テレポート

東京・お台場にある、りんかい線「東京テレポート」駅のまわりの、ビルが多いけどそれぞれの間隔が広くてスッキリしている空間が好きで、まずはその情景を描きたかった。さらに雨の風景が浮かんで一度書き上げたのだけど、レコーディングの最後の最後になって大幅に修正した。友人からのメールで「自宅の納屋の天井に燕が巣を作った」というのを読んで、雨の中を飛んでいく燕が思い浮かび、今の形になった。安田寿之さんのシンセサイザーやリズムトラックの補強のおかげで、曲の重心がしっかりとして、かつ全体が華やかになった。
3 春のセオリー

「HARCOの春フェス 2016」で生まれた楽曲。詩は山田稔明くん。以前から他のアーティストに詩を提供することの多い山田くんだけど、久しぶりに自分でもすごく納得のいくものが書けたと言ってくれた。「新しい名前で呼ばれて振り返る」「僕らは三叉路に立ち地図を読む」など、これからの僕のことを暗示しているような言葉が多くてハッとする。Aメロを歌ってくれたのは、空気公団の山崎ゆかりさん。実は「ゴマサバ」のアルバムに向けてそれまでの5年のブランクを埋めるために、当時よく頻繁に聴いていたうちのひとつが空気公団だった。だからこの曲のメロディもすぐに閃くことができた。
4 北斗七星

2007年のアルバム「KI・CO・E・RU?」に収録するはずだった曲で、ヴォーカルトラック以外はすべて2007年に録音したもの。僕の楽曲には珍しく管楽器をフューチャーしている。サビのコード進行は非常に複雑なのだけど、デヴィッド・フォスターなどと肩を並べるAORの大御所ジェイ・グレイドンが、アース・ウィンド&ファイヤーに書いた「After the Love Has Gone」という名バラードからヒントを得て書いた。詩の舞台は北海道で、上京して一度地元に帰ってきた彼女と会うという設定で書いた。
5 TOKIO -平野航&HARCO REMIX-

言わずもがな、沢田研二さんの代表曲。昨年発売された「PEACEFUL 2」という男性ヴォーカルカバーアルバムに収録した楽曲が元になっている。CMソングをたくさん手がけている平野航さんがフォークトロニカ風にアレンジしてくれたものを、このアルバムに馴染むようにドラムトラックやマリンバを加えたリミックスを施して収録した。「『東京が空を飛ぶ』って究極の擬人化、、、なかなか思い付かないぞ」と、何歳だったか忘れたけれど、初めて聴いて感じたことを今でも覚えている。作詞は糸井重里さん。
6 期待の星

今年の3月のライブの、アンコールセッションのために作った1曲で、ベベチオの早瀬直久くん、ゲントウキの田中潤くんとの共作。Aメロは早瀬くん、Bメロは潤くん、サビは僕という形で、リレー形式で制作したのだけど、これは前作「ゴマサバ〜」に収録した、堀込泰行さん&杉瀬陽子さんとの共作「口笛は春の雨」と同じスタイル。はじめにデモを作り始めてくれた早瀬くん曰く「東京オリンピックを意識して若い世代に向けた曲になればと。『りんりんりん』というのは、五輪と僕ら3人を掛けている」とのこと。そんな発想が斬新で面白く、潤くんのコーラスワークに触発されて僕もフェイクを重ねたりした。
7 Let Me Out

今年に入って最後の一押しで制作した2〜3曲のデモのうちのひとつ。ここ5年くらいの海外のシンセポップシーンが好きで、とくにこの曲はニュージーランドの女性ソロユニット・Ladyhawkeから影響を受けて作った。Aメロ〜Eメロまで展開がいくつもあって、目の前の風景がCGやVRの世界のようにハイスピードで変化していくような、そんなアレンジにしたかった。安田さんのプログラミングとおなじみの石本大介くんによる様々なギターで、デジタルとアナログが心地よく調和した形になり、僕の大好きなイギリスのクラブ系デュオ・Lemon Jerryにも通じる音像になって、とても気に入っている。
8 親子のシルエット

静岡県へ日帰り旅行へ行くのがここ数年のブームになっていて、3〜4ヶ月に1回くらい通っている。ちなみに神奈川に近い三島の街が一番好きで、帰りがけに少し足を伸ばして沼津まで向かい、そこの海岸沿いを歩いていたときにこの曲のイメージが浮かんだ。いっとき、もう少し難解な詩になりそうにもなったのだけど、今の素直な気持ちを表現する方向にシフトして、納得のいく詩になった。Adi Nadaのコーラスやテープエコーが気持ちよい。
9 秋めく時間たち

コラボソング3曲目。活動休止中のキンモクセイのヴォーカル、イトシュンこと伊藤俊吾くんと開催した「HARCOとイトシュンの秋フェス」のために、Aメロを僕、Bメロをイトシュンという形で、おのおの詞と曲と歌を担当して作り上げた。今回のいろんなコラボで楽しいのは、みんなの歌をアカペラの状態で(僕だけが)聴くことができること。ここの帯域の成分が多いのか、こういう歌い方があるのかなど、作品やライブだけでは分からなかった部分に気付ける。イトシュンの素直な歌詞がその美声と相まって、年齢のせいかあとからじわじわ沁みてくる。
10 ロングウェイホーム

この曲は最後の最後までミックスがしっくりする形にまとまらなくて、最終日までエンジニアの廣瀬さんに無理を言い何度もやり直してもらった曲。オーバーアレンジ気味のアンサンブルではあるのだけど、いくつかの映画音楽の経験を生かしたものにしたかった。東京から自分の住む神奈川県川崎市まで車で戻って来るときに、多摩川を渡ったあたりで感じる”ホームスイートホーム”的な情感。それを僕なりの言葉で織り交ぜた1曲にしたくて、心のなかで川沿いを何往復もした。
11 あらたな方角へ

この曲も「北斗七星」同様、2007年のアルバム「KI・CO・E・RU?」に収録しようと当時レコーディングを進めていた1曲。でも最初にライブで披露したのは、さらに5年くらい前までさかのぼる。そのたびごとに詩が変わり、歌い方も変わった。この曲とともに成長してきたのかもしれない。ギルバード・オサリバン、ビリー・ジョエル、10CCの「I’m not in love」など、僕にとってのポピュラーミュージックの原体験が詰まったメロディ。


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