CM
2005.07.26
ここ何年か、いろんなCMソングを歌わせてもらっている。きっかけは何だったろう。あれは歌ではなくナレーションだった。4年ほど前におむつのCMで 「新しいパンツ、できました」と喋ったのが最初だったかな。MAスタジオで監督に「もっと明るく」とか「もっと優しく」とか「もっと歯切れ良く優しく」 なんて言われながら、最後の方はもうわけがわからないまま、それでも口が勝手に喋ってくれて、気がついたらOKをもらっていた。
それから間もなく、CMの歌を歌い始めて、次第に曲も作るようになった。そうなると必然的に演奏もその場でやってしまう。自分一人でドラム、ベース、ギター、ピアノなどを重ねていって、最後に歌を歌って1つのCMが完成ということもある。このスタイルはHARCOのレコーディングでさんざんやってきていたので、それが15秒サイズになっただけと考えれば、これも1つのHARCOなんである。そう思い始めた頃からこの仕事が一気に楽しくなった。
昔から、友達のラジオ番組のジングル(3秒くらいのものとか)を作るのが好きだった。頼まれてもいないのに自ら率先して作って渡していたものだ。あまり機材を持っていなかった頃は、効果音を拾ってきてサンプラーで加工したりした。いろんな大きさのコップを叩いて微妙にチューニングを調整すれば、どこ にもないコップの鉄琴が出来上がる。そんな具合に。
ところで、インダストリアルデザインという言葉があって、それは家具や食器や車をといった生活を取り巻くものをデザインすることを言うらしい。僕の勝 手な意見だが、CM音楽も言い換えればインダストリアルミュージック(産業音楽?)なんじゃないだろうか。
スプーンとか椅子とか、あたりまえに存在しているものに、自分なりのデザインを施すことによって付加価値を付けること。ときに先進的に、ときに伝統に 立ち返って。一方、右から左にどんどん溢れてくる企業のCM。そこに音楽をつけること。人を引きつけることに妥協しないこと。
でもその時点で、それらはもはやデザインでも音楽でもなく、ひとつの「環境」になる。その環境はやがてすべての人に帰ってくる。日頃の生活そのもの。 環境と共鳴しながら作るってなんて素晴らしい!でもなんて難しい。
50年前、レイモンドスコットが作ったいくつもの電子音楽も、当時たくさんのアメリカのCMに使われた。その風変わりで陽気な曲たちは、誰よりもいちばん子供たちに愛された。子供たちはそんな環境に育てられて、新たな環境を作っていく。
あの「おむつ」をはいていた子供が、いつか僕に仕事をくれる日も来るだろう。






